実は自覚してるんです。 嫉妬深いの。ヤキモチ焼きなの。 でもどうしようもないでしょ? こういう想い、自分でコントロールできるわけないじゃない。 ねぇ、だから勘弁してくださいよ。 これも愛故って、ね? |
「あ、いてっ。」 「どうしました?」 カカシの小さな声にイルカが反応し、台所で洗い物をしていたのを中断する。手を拭きながら居間へ戻ってみると、カカシが親指をくわえているところだった。 「指、切ったんですか?」 「あぁ、はい。クナイの手入れをしていて、切りました。」 ちゅっと音を立てて親指を吸うが、思ったより深く切ってしまったのか血が止まらないらしい。イルカは救急箱を取り出して絆創膏を渡してやる。 「やっぱ買い換えなきゃだめですかねぇ。」 「うわー、高そうなやつですねー。」 カカシが手入れしていたクナイは高級品で、イルカには手が出せない代物だった。しかし相当年季が入っているらしく切れ味が鈍くなったそうだ。それでも鈍く光る切っ先が恐ろしい。よほどの職人が作ったものなのだろう。 「うん、結構いい値段ですよ。でもそれに見合った価値があります。でも流石になぁ・・・。」 カカシが片目を瞑って切っ先を見た。よく切れる包丁より、切れ味が悪い包丁の方が指を切る。クナイも同じだ。だから手入れをしたカカシは指を切ってしまったのだろう。 「贔屓にしてた職人さんなんですか?」 「はい。よほどのことがない限り、あのジイサンが造ったものを買っていたんですが・・・たしか引退したんですよねー。」 「年だったし。」と言い、残念そうにカカシは眉を八の字にした。そしてもう一度そのクナイを研ぎ始める。よほど気に入っているのだろう。シャッシャッという砥ぎ石と刃先が擦り合わさる音を聞きながら、イルカは何気なしに聞いてみた。 「何て職人さんなんですか?」 「んーと・・・。」 その名前を聞いて、イルカは眼を輝かせた。
「はい、今日の任務は終了。ご苦労さん。」 泥に塗れた銀の輪を確認し、さらに泥だらけになっている部下の子供たちにそう言う。すると金に輝く狐子と復讐を誓った子鬼、そして桜色した恋する少女がパッと顔を輝かせた。 「や〜っと終わったってばよ!あのオバサン、何で田んぼの中に指輪なんか落とすんだってば!」 「ナルトうるさいわよ!任務なんだから仕方ないでしょ!」 「・・・ウスラトンカチ。」 ぎゃあぎゃあという表現が一番しっくり来る。前を歩く子供たちは任務前と変わらぬ元気さで話し、カカシは苦笑しながらそれを見る。するとナルトが駆け寄ってきた。 「なぁ、カカシ先生!今日はオレも一緒に受付行っていい?」 「んー?何で?」 ナルトはカカシの顔を仰ぎ見ている。瞳はキラキラ輝いていて、どこかの教師にそっくりだ。カカシはひっそりと笑った。 「イルカ先生いるかもしんないじゃん!オレ、久しぶりに会いたいってばよ!」 「ナルトは本当にイルカ先生好きよね〜。」 サクラの呆れガ交じった声にすぐさま反応し、ナルトはカカシから離れ仲間の輪へと入っていく。そして「じゃあサクラちゃんは、イルカ先生嫌いなのか?」「そんなこと言ってないでしょ!馬鹿ナルト!」「うるせぇ・・・。」とお決まりのパターンに嵌り、また延々と会話が続いていった。 「それじゃあ今日は三人に報告書を任せよう!ここで解散!」 「おいカカシ。」 カカシはしめたとばかりにそう言って、この場から退散する。急に物事を進めたことに対してのサスケの不審気な声はこの際無視。カカシは音も立てずにその場から消えてしまった。 カカシが受付所に行かない理由は簡単だ。今日はイルカに受付業務が入っていない事を知っているから。 ナルトには悪いけど、イルカ先生独り占めしたいもんねぇ。 まるで子供だとイルカが苦笑するような事を考える。報告書作成という面倒な仕事を押し付けた自分の足は、軽快にイルカの元へと向かっていく。多分この時間なら職員室だろうと目星をつけて。 「ビンゴ!」 廊下を曲がったところにある職員室前でイルカを見付け、カカシは目を細めた。イルカは職員室入口で同僚の男と話をしていた。 ・・・何、あの男。 ただの同僚。そんなこと分かっているけれど面白くは無い。カカシは甘い雰囲気を霧散させ、気付かれないように彼らを盗み見た。 イルカは少し困ったような、心配そうな表情で男を見ている。 ちょっと、何でそんなカオ見せんのよ。 ふつりと理不尽な怒りが湧いてくる。カカシは口布の中で上唇を嘗めた。ぽこりぽこりと湧き上がってくる怒りを抑えることが出来そうにない。 ねぇ、そういうカオ。オレ以外に見せんなって何回言ったら分かるの。 恐れ縋る表情はオレのモノだとイルカは自覚していないのか。 「腹立つねぇ。」 壁に爪を食い込ませ、相手の男を殴り飛ばしたい衝動を抑える。その間もイルカと同僚は話を進めている。イルカは同僚に何かをねだる様に手を合わせ、何度も頭を下げている。 そんなイルカに絆されたのか、同僚の男は彼の肩に手を乗せ頷く。頼みを了承したのだろうか。パッと表情を明るくしたイルカは溢れんばかりの笑顔のまま、男に抱きついた。 うわ。限界。 ばきりと右手から嫌な音が聞えた。見なくても分かる。壁に食い込ませていた己の拳がコンクリートを食い破ったのだ。その音で振り返った二人は驚いている。まぁ当然だろう。 「イールカ先生。もうすぐあがり?」 ゴリゴリと手の中の壁の名残を弄ぶ。イルカは慌てて同僚に礼を言い、カカシに駆け寄った。マズイところを見られた。彼の顔に、はっきりクッキリそう書いてある。 「あ、あのカカシ先生・・・。」 「ねぇ、あれだぁれ?」 職員室へと入っていったイルカの同僚を見ながら言うと、彼はこれまた困ったカオをした。そして「同僚です。」なんて答えてくる。そんなこと分かってるの。 「何話してたんですか?」 「えっ、いや。世間話を・・・。」 へぇ、隠しておきたいの。 カカシは少し下にあるイルカの目を見る。イルカはさっと眼を逸らした。何て嘘吐くの下手なんだろうと、カカシはほんの少しささくれ立った気持ちを和らげる。 あぁ、ホント。 アンタはオレの何もかもを左右するよ。 「教えてくれないんですか?」 オレの機嫌を良くも悪くも出来るイルカ先生。だから早くオレの気持ちを治して。 カカシは出来るだけ優しくイルカに聞いた。自分の額宛と彼の額宛の金属部分をかちんと当ててみる。急接近した顔に照れたのか、イルカは頬を染めた。少しずつカカシの気持ちが浮上していく。 「なんでもないです!カカシ先生に教えるようなことじゃないです!!」 いやいや本当に見事です。 イルカの返答にカカシはニッコリ微笑んだ。 気分は地獄行き直行だ。 「あ〜あ、お仕置き決定ー。」 「はい?」 その一言に、イルカはさっと顔色を悪くした。
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