炎 +α
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「よぉ、カカシ。」 「アスマ。何?任務帰り?」 「まぁな。」 所々汚れているベストを着ている大男は、上忍待機所に入るなり銜え煙草に火を点けた。カカシは愛読書を読んだまま、彼に答える。 どかりとカカシの横に腰を下ろしたアスマは、それ以上何を言うわけでもなく煙草を吹かし、カカシもまた文を読み続けていた。慣れている相手だから気にならない沈黙。しばらくその時間が続き、待機所には二人以外誰もいなくなった。 流石に退屈になったのだろう。アスマが煙草を揉み消し、カカシに話しかけた。 「そういやよ、花街に新しい遊郭ができたそうだぜ。行ってみるか?」 「んー?・・・いい。どうせ、あの人以外じゃ満足できないしね。」 小説から視線を外さず、さらりと言ってのけたカカシに、アスマは眉を下げた。 「何か意外だぜ。」 「何が。」 「・・・お前が誰かに本気になるなんてな。」 「そ?」 くつり。 カカシが笑った。何だか嫌な笑みだとアスマは思ったが、敢えて口にはしなかった。誰だって命は惜しい。 「ガキの頃に会ったって言う奴はもういいのか?」 アスマの問いに、ようやくカカシはこちらを見た。その眼が愉快そうに笑っていて、アスマは不快な気分になる。もう一本煙草に手を伸ばす。 アスマとカカシの付き合いは長い。 カカシはずっと子供の頃に出会ったという少年に執着していて、それ故誰にも本気にならず今日まで過ごしてきた。アスマはその話をうんざりするほど聞かされていた。 その異常なまでの執着は恐いくらいで、だからアスマはカカシがイルカに心惹かれたということが信じられないでいる。 「お前、確か暗部時代にそのガキのことレイプしたんだろ?」 「そ。あの日は興奮が収まらなくて、ついついね。」 「んで、ハマちっまったんだっけ?」 カカシは小説を閉じた。その当時を思い出しているのか、眼が弧を描いている。興奮が殺気すら纏い始め、ピリピリと空気が震えた。 「最高だったよ、あの子。怯えて震えているのに虚勢張り続けて。でも最後に泣いたんだよねぇ。アレが泣く度に中が締まって気持ちよかった。」 そうだ。 そんな最高の獲物をこの男が逃すわけが無い。しかし相手の少年はどうやら火影のお気に入りだった。事実は直ぐに隠ぺいされ、彼が回復するまで結界で守られた。そしてカカシは長期里外任務に着いた為、帰ってきたときには行方すら分からなくなっていたらしい。 それでもカカシは諦めず、ずっとその少年を探していた。 九尾の事件の後も、下忍担当になってからも。 そこまでの執着をあっさり捨てて、イルカに収まった? アスマは何となく納得いかないでいた。とは言っても他人の色恋沙汰。口を出しては馬に蹴られる。アスマはぷかりと紫煙を吐く。 「イルカはいいよ。」 「・・・あ?」 カカシはそれは嬉しそうに微笑んでいた。その笑みを見て、アスマはぞくりとした寒気を感じた。 「泣く度に体内が締まる。」 「・・・。」 「変わらないねぇ。」 そう言えば、うみのイルカは三代目火影のお気に入りだった。 まるで子供のように可愛がっていた。 「電話越しの声だけでも、おっ勃てちゃったよ。」 「カカシ、お前ぇ・・・。」 そうだ。 この男は何一つ逃しはしない。 「可愛い可愛いオレのイルカ。」
「誰にもやりゃしねぇ。」
アスマは煙草を深く吸った。
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