炎 7 |
目覚ましよりも早く起きる習慣がついてしまった。 イルカは荒い息の中そう考える。 『おい。集中しねぇと遅刻するぜ?』 「あっ・す、みま・せ・・・っ。」 機械越しの男の声が、ザクザクと聴覚を切り裂いていく。イルカは携帯を肩口に挟みこんで、懸命に震える指を動かしていた。くちゅくちゅと下半身から聞える濡れた音。情けなくて堪らないのに、指は止まらない。 「んっぁ・あ・あ・・・っ。」 『イルカが朝からケツ使うのはキツイっつーから、手コキで我慢してやってるんだぜ?』 その物言いに、イルカはぐっと唇を噛んだ。馬鹿にされているのは分かっているが、悔しい。 『イールカ。感謝の言葉は?』 「あ、ありがと・ござ・・・ますっ。ごしゅじ、さまぁ・・・!」 カカシが泊まりに来たあの日から一週間は経とうとする。しかし、行為は急にエスカレートした。 毎日携帯を身に着けろと言われたとおりにしておくと、自宅だろうがアカデミーだろうが所構わずそれは自分を呼び出し、変態行為を強要するのだ。もちろん時間なんて関係ない。今のような出勤前や、夜中なんて当たり前。一番困るのが、やはり仕事中だった。授業中もバイブレーションで呼び出してくる。通話できないと分かっているのにかけてきて、出れないとはどういうことだと怒っては昼休み一杯使って、オシオキをしてくるのだ。 イルカは一日の中で性行為をしている時間が最も長く感じる。 それほどまでに身も心も男に蝕まれていった。 感じやすくなった身体は、簡単に濡れるようになった。男の声といわず、携帯が震えるだけで下半身が重くなるときもある。自分の変化に心が追いつかず、自己嫌悪でしばらく泣き続けた。しかしそれすら男は許してくれない。 「ん、ん、もっ・でる・・・!」 『まだダメだ。』 「やっ・おねが・・・っ!」 もう、彼の許可なしでは達せなくなっている自分がいる。 男にそこまで変えられた。 『イルカ、まだ分かってないのかぁ?ご主人様に、お願いは?』 自分を主人と呼べと、男は強要してくる。しかしそう呼ぶたびに、身体が熱くなるのも事実だ。 いったい何時から、自分はこんなにいやらしい身体になったのだろう。 男の電話を取った時から? 狐に犯された時から? それとも、これが本当の自分? 「ご主人、さまぁ・・・!イかせてくださ・・・っ!」 『いいぜ、イケよ。』 その言葉を聞いた途端、欲望が弾けた。目の前が白くなって、快感の余韻に震える。 気持ちいい。 気持ち悪い。 同時に相反する感覚を味わって、イルカは涙した。 今日もまた、犯される一日が始まるったのだ。
「カカシ先生・・・こ、こんにちわ。」 「あれ、イルカ先生。ナルト達の様子見に来たんですか?」 「あー!イルカ先生だってばよ!センセ〜!!」 「きゃっ!ナルト!濡れた手、振らないでよ!」 「ウスラトンカチめ。こっちまで濡れたじゃねぇか!」 川で落とした財布を捜すという任務を遂行している子供たちは、きゃあきゃあと騒ぎながらも、イルカに手を振ってくれた。その微笑ましい光景に頬を揺るませ、イルカも手を振り替えしてやる。 「お前たち、集中しろよ〜。イルカ先生も見に来てくれたんだから、早く終わらせろ〜。」 のほほんとした口調のカカシを見て、三人の子供は「じゃあ手伝え!」と同時に言い放つ。それを軽くかわし、カカシは河原に座りなおした。 「珍しいですね、授業無いんですか?」 「えぇ、今日は雑務しかないんです・・・。」 イルカの覇気の無い声に、カカシは不審に思う。イルカは不審がられたことに気付き、びくりと身体を硬直させた。そして出来るだけ普段を装い、川の中の子供たちを見る。 「だから様子を見に来てくれたんですか。」 「はい。一度見ておきたく、て。」 声が震える。イルカは冷や汗を流した。カカシの方を見れないでいる。ばれたらお終いなのだ。こんないやらしく、汚い自分を。 実はイルカの最奥には、あの日送られてきた物体のうちの一つが入っていた。もちろん仕事に出かける前に男に指示されたので、そんな行為をしている。物体は、ピンポン玉より小さめの玉が幾つも連なっている物で、電動で動くものではない。しかし五つあった玉を全て身の内に収めたので、圧迫感が半端ではない。しかも歩くだけで、時折イルカの弱い部分を刺激する。継続し続ける快感ではなく、時折甦る刺激が朝からイルカを悩ませていた。 しかも男は更なる命令をイルカに出したのだ。 好きな男に、その状態で会いに行け。 イルカはそう言われたとき、言葉を失った。いつの間にか、カカシのことが男にばれているのだ。好きな「相手」ではなく、好きな「男」と限定され、アカデミーで会える事を知っていることが、ばれていることを決定させた。イルカは暗に、そうしなければカカシにばらすと言われたのだった。男はとても愉快そうに命令してきた。 じりじりと焼け付くような嫌悪と快感を身に乗せて、イルカはカカシの前にいる。 つい一週間前に気付いた自分の気持ち。だが、一生告げることもなく終えるのだろうと思う。カカシも自分に好意を寄せてくれている事をイルカも知っていたが、だからと言ってどうにも出来ない。 こんな自分が、カカシ先生にどうして好きだと言えるだろう。 もし万が一カカシの方から告げられたとしても、断らなくてはならない。 このいやらしく汚れた身体を晒して嫌われるくらいなら、いっそ片恋で終わる方がマシだ。 「イルカ先生?具合悪いんじゃないんですか?」 「え。」 身体の熱を持て余しているイルカは、頬を染めていた。カカシは熱があると思ったのか、心配そうに声を掛けてくれた。そしてするりとイルカの額に手の平を当て、熱を測る仕種をする。カカシに触れられ、イルカの胸は一気に跳ね上がった。 「ちょっと熱いですよ?」 「あっ・・・!」 イルカは洩れ出た甘い声に自分自身驚いて、口元を手で覆った。そろっとカカシを見てみると、驚いている。欲情した己を見られ、イルカは羞恥で死んでしまいそうだ。涙が眦に溢れてくるのを感じ、身を翻した。 「す、すいません!失礼します・・・!!」 「あ、イルカ先生・・・!」 カカシの声を聞きながら、イルカは思い切り走り去る。恥ずかしさで涙が溢れてくる。アカデミーの一番端にあるトイレに駆け込んで、個室に篭る。ここは滅多に使われない場所だ。これなら、暫く篭っても大丈夫だろう。そう思い、イルカはすぐさまズボンに手を掛けた。もう、我慢できない。体内の異物をとってやると、一気に脱いだ。 「!!」 抜群のタイミングで携帯が鳴った。胸のポケットから震える携帯に思わず悲鳴を上げてしまう。まさか、本当にずっと見られているのか。ぎこちない手付きで通話ボタンを押すと、男の意外そうな驚いた声が聞えた。 『あ?授業中じゃなかったのかよ。』 「・・・。」 その驚いている声を聞いて、ほんの少しホッとする。別に監視されているわけではないようだ。またイルカに無茶を言いたいがために、普段ならば授業中の時間帯にかけてきたのだろう。 『イルカ?』 「あ、今日は・・・授業が無くて・・・。」 『ふぅん。まぁ、いい。おい、ちゃんとカカシとやらと会ってきたのか?』 やはりばれていた。イルカはごくりと唾液を嚥下し、それでも動揺しているところを悟らせてはならないと、努めて冷静に返事をする。 「あ、ってきました・・・。もう、こんなことは・・・。」 『何言ってやがる。つーか、どこにいんだよ?』 「・・・トイレです・・・。」 『――てめぇ、まさかアナルボール取ろうとしたんじゃねぇだろうな!?』 ぎくり。イルカは硬直した。男が言い当てた事を今まさにやろうとしていたのだ。イルカが詰まったことに、自分が言った事が当たっていた事を分かった男は怒りを含んだ声でイルカにさらに命令する。 『逆らいやがって・・・ベルト出せ。』 「えっ?」 『主人に逆らったんだからなぁ。当分射精は禁止だ。ベルトは一番きつい所で止めろ。』 「そ、そんな・・・っ!」 今までの刺激で、膨れていた自分自身に男はまたもやベルトを巻きつけろと言ってきた。イルカはいやだと訴えたが、もちろん却下される。言われたとおりにベルトをし、イルカは苦痛に呻いた。 「うぅ・・・っ、許してくださ・・・っ!」 『うるせぇ。許して欲しかったら・・・そうだな。昼休み、どこか人目の無いところに来い。そこで再調教してやる。いいか、お前から携帯にかけてこいよ?』 「・・・ひぅ・・・っ。」 『授業が無くてよかったなぁ?』 通話が途切れた後も、イルカはしばらくそこから動けなかった。
昼休み。 イルカはもつれながらも必死になって走り、倉庫へと転がるように入っていった。中から鍵をかけ、何度か深呼吸をする。この倉庫は、普段使われておらず、物置に使われている。なので昼休みや午後の授業中、まず人は来ないだろう。埃っぽい倉庫の中は昼間なのに薄暗い。物置部屋にしているので、使われなくなった机や椅子、体育用のマットなど乱雑に置かれていた。 いくら人が来ないといっても、ここは職場だ。イルカは罪悪感を噛み締めながら、それでも解放を望んで携帯を手に取る。一つしか入っていないメモリーにあわせ、通話ボタンを押した。 『はぁい、イルカ先生〜。』 茶化した声が神経を逆撫でする。しかし逆らえるはずは無く、小さく懇願した。 「お、ねが・・・っはやく・・・!」 『そう焦んなよ。』 「外させてくださ、い・・・っつ!!」 言いながらイルカはズボンを下ろす。窮屈そうに主張している自分自身を取り出したが、圧迫感はまったく消えない。それよりも自分自身がベルトで諌められているのを目の当たりにし、さらに苦痛が増した。 『焦るなっつってんだろ?イルカ、ちゃんとローション出せ。持ってきてんだろ?』 「は、はい・・・っ。」 イルカは男に言われたとおり、脱いだズボンからローションの小瓶を取り出した。真新しい瓶の中身はちゃんぷんと音を立てて揺れている。この中身を何回使い尽くしただろう。失くす頃に送られてくるので、切らしたことは無い。 『中身、全部おっ勃っててるモンに垂らしな。』 「ぜ、んぶ・・・?」 『そうだ。ケツの穴まで濡れるように、大股広げて垂らせよぉ?』 男の下卑た声が耳に障るはずなのに、イルカの蕩けた思考ではそれも感じなくなっていた。息を荒くし、言われたとおりに行動していく。頭の隅で、どうして自分はこんなことしているのだろうという考えがあるのだが、根付かない。すぐにボロボロと崩れ落ちていってしまう。 「んっ・んっ。」 トロトロとローションが滴る感触にさえ熱を煽られて、イルカは小さく喘いだ。男が言ったとおり液体は最奥にまで落ちていき、座ったマットにも染み込んでいく。 『小便漏らしたみたいじゃねぇ?』 「っつ・・・!」 下品に笑われ、イルカはカッと頬を染めた。おもらしをしたようになっているのは分かっていたが、改めて言われると羞恥に浸されるようだ。 「も、取らせて・・・ッ!」 『何を?』 「なっ・何って・・・!」 『分かんねぇなぁ〜。』 「そんな・・・。」 男はイルカを弄んで楽しんでいる。このままだと、男の言葉遊びは延々と続きそうだ。イルカは恥ずかしさを堪えながら、震える唇を動かした。 「ペ・ペニスを・・・縛っている・・・ベルトをとらせてくださ・い・・・!」 『それだけか?』 「・・・っ。おし・りのっ。おもちゃも・取ってください・・・!」 どもりながらも何とか伝える。息を切らして涙を流して、イルカは男に許しを請う。男はイルカの泣き声を聞いて、満足したらしい。いつも通りのちゃらけた口調で許可を出した。 『いいだろう。じゃあまずはベルトからだ。』 「ぁ・う・・・っ。」 『イルカ!てめぇ、ご主人様にお礼の言葉を忘れてねぇか!?』 男の怒った声に、イルカは肩を震わせる。ここで男の機嫌を損ねたら、どんなことをさせられるか。イルカは慌てて「すみません。」と謝った。 蝕まれている自分を認識するのはこういう時だ。 「すっすみません、ご主人様・・・っ!」 あぁ、なんて自分は薄汚いんだ。 「許してください・・・!」 もうどうでもよくなってくる。 何もかも。 どうでも、いい。 『イルカ。犯して欲しいだろ?』 男の声が自分を殺すことだけ分かる。 「犯して・ください・・・っつ。」 涙で引き攣った声が部屋に響いた。 その刹那。 ガタリ。 イルカの背後から物音が聞えた。イルカは目を見開いてその音を聞く。イルカの背後には机や椅子が無造作に置かれ、その奥に何も入っていない本棚がある。しかしそのさらに奥のことは確かめていない。 何があるのか。 誰がいたのか。 「・・・イルカ、先生・・・?」 そうだった。 自分を殺せるのはもう一人いた。 イルカはその人物の声を聞いて思い出す。 自分を殺せるのは電話の脅迫者と、もう一人。 「カ、カシ・・・先生・・・。」 はたけカカシだ。
嘘吐いてすみません。 |
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