爆発しそうな理性を抱えて、オレは日々を過ごしていた。 オレの恋人はそれはそれは可愛い人で、笑顔なんて特に最高。 アカデミーの生徒はもとより、元教え子、同僚、はたまた上忍、なんと里の最高権力者である火影にすら愛されているので、オレは毎日嫉妬しちゃう始末だ。 ちょっと天然で、それが故の癒しオーラがまたいいんだよね。 もちろん身体の相性も抜群だ。 あんなに気持ちがいいセックスは初めてで、オレは盛りがついた犬のように彼を求めている。 んだけど・・・。 ちょっと問題が。 彼とのセックスでオレの知らなかった一面が出たと言うか・・・。 それに、彼のコンプレックスも発覚してしまった。オレはそれすら可愛い!って思ったんだけど、彼はどうにも恥ずかしがって大変なのだ。 とにかくオレ達のセックスは大変なんだ。 |
「欲求不満〜!?」 カカシの言葉に大袈裟すぎるくらいに反応したのは、猿飛アスマだ。騒がしいのが当たり前の居酒屋だったので、周りの客には迷惑をかけなかったのが幸い。あまりにも大きく反応されたことに言った本人のはたけカカシは、「何だよ。」とじとりと睨んだ。 「だってそうだろうよ。里一番の技師がよぉ。あぁ、何だ。イルカが下手だってのか?」 「ンな訳無いでしょうが。イルカ先生に不満・・・は・・・ないけど・・・。」 「あるんじゃねぇか。」 語尾が小さくなったカカシを見て、アスマはぐいっと大ジョッキを飲み干す。ちびちびとジョッキの中身を飲むカカシを余所に、すぐさま次の酒を頼むところが憎らしい。 「で、イルカへの不満ってなんだよ。」 長い付き合いであるアスマとカカシは、遠慮なく話し合える相手同志だ。カカシだって、こんな話を他人にあまりするものではないという一般常識ぐらいは持っている。しかしカカシにとって、事は重大なのだ。なので、恥を捨ててアスマに相談を持ちかけたのだった。 「不満は、あんまりさせてくんないこと。――まぁそれは原因が分かっているから、いいんだけど。」 「何だ、原因って。」 「それは内緒。」 にこっと笑いながらカカシは答えたが、右手で持っているグラスにヒビが入った。この内容については触れてくるなと言うことだろう。カカシの本気を見て、アスマはごくりとつまみのホッケを飲み込んだ。 「そうじゃなくって、アスマさぁ・・・。」 「あん?」 「セックスの時どんな感じよ。」 「ブフッ!!」 ホッケに続いて飲んだビールをアスマは盛大に噴出した。まるでコントのような出来事に、やはり周りは気にしてはいない。居酒屋最高とカカシは思い、半分無くなったアスマのグラスに気を使って再度注文をしてやった。 「きっ・気色悪ぃこと聞くんじゃねぇよ!」 「いやさ〜、他人ってどんな会話すんのかなぁって。」 「かいわぁ〜!?」 うんうんとカカシは頷き、アスマの返事を待っている。アスマは呆れ半分嫌気半分の重い溜息を吐く。運ばれてきた新しいグラスに口を付け、景気付けにかグッとあおった。 「ヤッてる最中の会話なんて覚えてねぇよ。」 「そんなもん?」 「つーか、言えるか。」 確かにその通り。カカシはアスマの答えに納得し、グラスの中身を飲み干す。確かにその通りなのだが、参考にまったくならないではないか。 「何、お前。変な事言ってんのか?」 「・・・そうかも。」 「例えば?」 アスマにとっては当然の流れでそう聞いたのだが、カカシにとっては核心だったようだ。聞いた途端にガシッと両肩をつかまれ、正面を向けさせられた。カウンター席で忍び二人が見詰め合うシーンなんて異様も異様だったが、そこも居酒屋。酒の席という名目で流される。 「恐いって言われたんだけど。」 「はい?」 「イルカ先生とのエッチで、イルカ先生に『恐い』って言われたんだけど。」 「恐い・・・?」 「そう、イルカ先生に。『どうしてそんな意地悪言うんですか。』『そんないやらしいこと言わないでください。』『いつものカカシ先生じゃありません。恐い』って、イルカ先生に――!」 「お、お前何言ったんだよ。」 唯一露わにしている右目をギンギンに見開いて、ガクガク揺さぶりながらカカシはアスマに語った。ガクガク揺さぶられながらアスマは、今の間で何回「イルカ先生」を連呼したんだコイツ。なんて考えた。それほどまでにカカシは真剣で、それこそ恐い。 「イルカ先生とのセックスで、オレ目覚めちゃったみたいなんだーよね。」 「何に。」 「・・・S?」 疑問系かよ。 アスマは心の中で突っ込んだ。未だガクガクされているもんだから、声に出せなかったのだ。 「オレにこんな一面があったなんてねぇ。」 自覚無かったのかよ! 突っ込み第二弾も、やはり音にはならなかった。興奮気味のカカシを止めて、アスマは煙草に火を点ける。こうして何とか場を戻そうとした。 「で?イルカとヤッてる時に、Sっぷりを発揮して恐いって言われたのか?」 「そうみたいでさぁ・・・。別に痛いことしたわけじゃないんだけど。・・・ちょっと意地悪なこと言ったかもしれないけど。」 ブツブツと文句を言うカカシに、アスマは何とも言えなくなってしまう。正直なところ、なんだこの拗ねた子供はという感想だ。イルカと会ってからのカカシは、まるで子供のようになるときがある。幼い頃から数々の過酷な任務をこなしてきた里の誉れである彼は、どこか人離れしたところがあって近づけない部分が見え隠れしていた。イルカと出会ってからのカカシは、徐々にそれが無くなり、子供時分に表すことが出来なかった幼さをイルカに見せている。 まぁつまり、甘えているってことなんだろうが。 「意地悪ねぇ・・・?」 「だってあの人すんげぇ可愛いから!」 あ、ヤバイ。スゥイッチ押しちまった。 アスマはそう感じ、煙草を消し再びジョッキを傾ける。ココから先は長い。覚悟が必要だ。 「だいたいあの人だって悪いと思うんだよね。いっつも可愛い笑顔を昼間見せてて、でも夜になると艶っぽい笑みになるの。そのギャップがすっごくそそるって言うの?もうぞくぞくぞくーってなっちゃうわけよ。分かる?まぁ髭熊には分かんないかもねぇ。んでオレのテクでよがったり泣いたりしてるの見てると、ますますゾクゾクゾクーってなっちゃってさ。そんなの我慢できるわけないでしょ?男の本能っての?もっと鳴かせたい、もっとよがらせたい、もっともっと虐めてぐちゃぐちゃにしていやらしいこと言って言わせてアンアンひぃひぃ喘がせてオレ専用の身体に仕込みたいって思ったわけよ。つまり何が言いたいかって言うとな、可愛すぎるイルカ先生も悪いってことだよ。そうだろ?アスマ。」 そんなことは無いだろう。 もちろんアスマも馬鹿ではないから、そんなこと言わない。突っ込み第三弾も言葉にはならなかった。とにかくさっさとカカシに言いたい事を言わせて、適当にあしらって、家に帰ろう。これは単なる惚気だろ? 「で、具体的に何して何言ったんだよ・・・。」 げんなりしながらも聞いてやると、カカシはまたもやグイッと両肩を掴んできた。もちろんグラスはカウンターに置かれ、回転椅子もぐるっと回され、正面から向きなおされる。 「最初は優しくを心がけていたから、そんなことしなかったんだけどねぇ。イルカ先生見てたら、嗜虐心グリグリ刺激させられちゃって・・・。」 「・・・縛ったとか。」 「当たり。あ、でも本格的にじゃなーいよ?両手首をちょっとだけ。」 それだけでも、イルカにとっては天変地異の出来事だろう。純朴を絵で描いた様な男だから。アスマはイルカに同情してしまう。 「で。嫌がったイルカ先生は脳天直撃なほど可愛くて、そのままアレも縛っちゃって、調子に乗ってその状態で抜かずの三発しちゃったんだよ。その時言葉責めっての?もガンガンだったらしくてさぁ、終わった後イルカ先生怯えちゃって・・・。でも仕方ないよねぇ。あんなに可愛い反応されちゃったらさぁ。だいたいオレ、あれでも我慢した方なんだよね。本当はもっと本格的な縛りしたり、道具とかも使ったり、先生の穴という穴、オレので溢れさせたいんだーよね。まぁ流石にそれ以来は自粛して普通を目指してんのよ。それがどうにもこうにも欲求不満に繋がっちゃってさぁ。あーもう!虐めたい虐めたい虐めたい!!イルカ先生にエロイこと言わせたい――!!・・・なぁアスマ。一般的な言葉責めってどこまで許されるんだよ。」 「知るか――――!!」 四度目の突っ込みは、アスマの叫びによって実現された。だがしかし、ぜぇぜぇと肩で息をするアスマを気にもせず、カカシは「うるさいなぁ。」なんて呑気にあしらってきた。あまりにも傍若無人なカカシの態度に、アスマは怒る気力もすっかり無くしてしまい、早くこの場から退散する方法を考え出した。 神妙な顔つきで「相談したい。」なんて言ってきたから付き合ったのにと、アスマは思った。しかしよくよく考えてみると、この男の顔は半分以上隠されている。神妙もクソもあったもんじゃないのではないか。アスマは今頃後悔した。 「カカシ・・・これやるから、後は勝手にやってくれ。」 「何。」 「新しく開発された媚薬だとよ。」 アスマがポケットから取り出したのは、小粒の錠剤。米粒ほどの小さな白い錠剤は透明なピルケースに入っていて、振るとカラカラ音を立てた。中身は二粒。 「新薬なんだが、失敗作らしくてな。ちょっとした伝手で貰ったんだ。」 「失敗作なんて、イルカ先生に飲ませられるかよ。」 「いや、人体実験済みなんだが、興奮作用はあるが感覚を増大させる事はできなかったそうなんだ。」 「つまりエロイ気分にはなるけど、いつもより感度が上がる事は無いってことか?」 「そういうこと。だから失敗作。これだけ小さければ、かなり便利だろうよ。くの一用だってよ。」 そこまで話して、カカシはもう一度ピルケースの中身を見た。照明で照らして中身を透かしてみる。 アスマ。お前が貰ったって事は、誰かに使おうとしてたってことか? とは流石に聞けなかった。 「全部貰っていいのか?」 「・・・まだあるから気にすんな。」 「・・・あっそ。」 「・・・。」 「・・・。」 きまずい・・・。 二人は無言で一気に酒を飲み干し、店を後にした。 カカシから解放されたが、なんとも言えない気持ちのままアスマは帰路に着き、カカシは意気揚々とピルケースを振りながらイルカ宅へと向かったのだった。
「イルカ先生〜。ただーいま!」 「お帰りなさい、カカシ先生。・・・ご機嫌ですね。」 まるで自宅のようにイルカのアパートに帰りついたカカシは、部屋へ入るなり素顔を晒し、イルカに抱きついた。勢い良く抱きつかれたイルカは、よろけながらもカカシを抱きとめ苦笑する。 「アスマと飲んできたんです。いい店見付けたんで、今度一緒に行きましょうね。」 「それはぜひ!よかった。オレ今日残業だったから、カカシ先生ご飯どうしているか心配だったんです。」 のほほんとイルカは答え、「風呂沸いてますからどうぞ。」何ていつも通りの様子だ。カカシもニッコリ笑って「ありがとうございます。」と素直に風呂場へ向かった。手の中でピルケースを揺らしながら。 自分の風呂を終え、イルカが上がってくる頃にビールを差し出した。ガシガシとバスタオルで頭を拭いていたイルカは嬉しそうにアルミ缶を受け取る。カカシは風呂に入る前と同じ笑顔でイルカに手渡した。 もちろん中には薬が一粒混入されている。 忍び用なので、もちろん無味無臭。 イルカはごくごくと美味しそうに喉を潤していった。 上下する喉を見ながら、カカシは高鳴っていく心臓を自覚した。ドキドキドキドキしている。どんな風になるんだろうとか、オレがどんなことしても受け入れてくれるんだろうかとか、っていうか、何しようか!とか邪な期待ばかりが胸を占める。 「カカシ先生?先生は飲まないんですか?」 「・・・いえ。たらふく飲んできたんで・・・。」 しかし予想に反してイルカはケロリとしている。カカシの答えに「ずるいな〜。」と茶化しながら言い、二本目を冷蔵庫から取り出した。 「イルカ先生・・・何とも無い?」 「? 何がですか?いくらオレでもまだ酔いませんよ。」 「はは・・・そうですよね。」 結局、一緒にベッドに入るまでイルカはいつも通りだった。 アスマめぇ〜! ベッドに入り、イルカに背を向ける形でカカシは横になっていた。期待していただけに、この仕打ちは酷いと思う。媚薬をくれたアスマに怒りの念を浮かべながら、カカシはもんもんとする思いを何とか消そうと必死になっている。イルカは静かに眠っている。背中でその気配を感じ取り、カカシは溜息を吐いた。今夜も欲求不満は解消できなかったが、仕方ない事なのだ。ちょっと寂しいけれど、イルカを抱き締めて眠ろうと体勢を変える。解かれている髪に鼻先を埋めて、背中からギュッと抱き締めた。 「・・・あっ・・・。」 「・・・?」 眠っていたと思ったイルカが、小さく声を上げた。不思議に思って顔を覗き込もうとすると、イルカはその行為を嫌がりこちらを見ようとはしない。抱き締めた身体はガチガチに緊張しており、辛そうにしている。 ・・・。 もしかして・・・今頃効いてきた!? カカシは一気に気持ちを高揚させ、ごくりと唾液を嚥下する。失敗作の媚薬がようやく効いてきたのだろう。無理矢理引き上げられた性欲にイルカは混乱しているらしく、ただ身体を硬直させている。 「イルカ先生・・・?どうしたの?」 「んっ・・・!」 耳元で囁くと、イルカはびくびくと震えた。興奮剤であって感覚を増幅させるものではないとアスマが言っていたが、もとから敏感なイルカのため、これだけでも反応してしまうのだ。 「な・何でもないです!ちょっとトイレに・・・。」 「トイレで何するの?」 「えっ。」 意地悪げに聞いてみる。イルカはカカシの問いに真っ赤になってしまった。すでに身体は変化しているだろうけれど、イルカからカカシを誘う事なんて出来ない。カカシもそれを分かっているから、こんな風に意地悪く聞いているのだ。 身体が変化して混乱しているけれど、トイレで一回抜けば治まるだろうと思っているに違いない。 イルカの心の内を考え、カカシはそうはさせないと先ほどよりも強く抱き締める。イルカは羞恥で答えることが出来なくなっている。 「ねぇ、イルカ先生・・・もしかしてエッチな気分になってるの?」 「あ・ちが・・・っ。」 「違わなーいよね?」 つつ・・・っとパジャマの上から局部をなぞると、イルカは大袈裟なくらいに反応した。カカシはぺろりと自分の唇を嘗める。 媚薬を飲んでいないのに、興奮する度合いは同じかも。 「エッチしよ?ね?」 「カカシ・・・せんせ・・・っ。」 躊躇っているイルカの快感中枢を布の上からゆるゆる撫でる。イルカの呼吸が乱れていくのをリアルに感じる。カカシはちゅっと音を立てて頬にキスをした。そしてそのまま、ねっとりと舌を這わせる。 「いっぱい嘗めて、いっぱい弄くって、ぶち込みたいよ。」 「あっ・・・あっ・・・!」
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