そう言うと、決まって照れて真っ赤になってしまう愛しい彼。 気持ちを確かめ合って口付けたら、自然と次の段階へと進むもんじゃないの? ――あれ〜・・・? |
それはそれは、とても困っていた。 ダラダラ流れる汗は緊張と我慢のため。ぐっすり安眠するために買った今流行の低反発素材枕なのに、役にも立たないと心の中で叫んでみる。 安眠妨害の原因は、愛しい愛しいイルカ先生。 同じベッドの中でくぅくぅと規則正しい寝息を立てている彼。カカシ先生と一緒に寝ると、嫌な夢見ないんですよ〜。なんて可愛らしい事を言って眠ってしまった。ぶっちゃけカカシは嫌な夢しか見ない。だってそうでしょう。 愛しちゃってる人と同じベッドなのに、一度だって手を出せていないのだから。 欲求不満で死んじゃうよ。 カカシは細くなった理性を総動員しながら、必死に眠りにつこうとしていた。 イルカはカカシが思った以上に恋愛経験が乏しかった。失礼な事かもしれないが、初対面の時から女の匂いがしない人だな〜なんて思ったくらいだ。だから即座に現在恋人なんていないだろうとか、過去にも一人か二人ぐらいしか付き合ったことはないだろうとか想像してしまった。今思うと、本当に失礼なこと考えていたと思う。 ナルトを通して出会って、ナルトと共に付き合いだし、ナルト抜きで会うようになる頃には、カカシはイルカが欲しいと考え始めていた。 不器用で何事にも懸命なイルカ。 自分の事より生徒の事を一番に考える、優しい人。 生徒の事より、オレの事考えてくれないかな。 いや、オレだけの事考えて欲しい。 気持ちがそう変化していくのに時間は掛からなく、気が付いたら行動していた。告白して意外にも受け入れてくれた事は、カカシにとって驚くことだったが嬉しい事には変わらない。 自分の過去とってきた行動や、現在ちょっと名が売れているということがイルカに迷惑をかけていたことは悲しいことだったが、そのことが二人の関係がいい方向へと進ませてくれた。 順調順調。 多少荒波が立ったこともあったが、カカシは満足していた。 キスどころか、誰かと付き合ったこともないというイルカ。そのことを恥じていたが、そんなこと関係ない。ゆっくりオレが教えてあげる。 そう、イルカが戸惑わないスピードでゆっくり・ゆっくり、ね? そう最初は余裕を見せていた。 が。 ちょっとゆっくりすぎやしないだろうか。 カカシは少し焦り始めた。なにせ、付き合い始めてから半年はたっている。いるのに、キス以上進んでいないのだ。イルカもキスには慣れてくれた。未だにぎこちない感じはするが、それは可愛いので構わない。 だけど、どうしてそれ以上進もうとしないのだろうか・・・。 カカシも何度かそれとなく誘ってみた事もある。イルカはどうも恋愛に恋しているところがあるので、カカシはムードというものを大切にしてみた。本当はイルカが好きな温泉でも入って、景色の良い宿に一泊とか出来たらいいのだろうけど、如何せん二人の休日が合うことは滅多にない。仕方がないのでイルカ宅の風呂に入り、せめてもと高級な日本酒を振舞った。上機嫌でイルカは酒を楽しみ、カカシも笑顔を絶やさない。 ほろ酔いになったイルカの肩を抱き寄せ、ゆっくりと口付ける。イルカは少し驚いたようだったが、カカシに身を任せてくれた。 『・・・ん・・・っ。』 『イルカ先生・・・。』 カカシの脳には聞いたこともない愛のテーマが流れ、畳の純和風の部屋にピンクのレースが何処からともなくヒラヒラと舞い出す。 これはいける! このままイルカ先生とめくるめく愛の世界へ――!! カカシは、いざ!とイルカを押し倒そうとした。 が。 『あっ!カカシ先生!!始まっちゃいますよ!』 『は?』 『いつも楽しみにしていたじゃないですか、わんにゃん奇想天外。』 わんにゃん奇想天外とは、犬猫をメインにしたクイズ形式のバライティ番組である。確かにカカシは毎週欠かさず観ていた。 でも、あれ? この雰囲気分かってくれないの? 呆然としてしまったカカシを余所に、イルカは嬉しそうにテレビをつける。『ほらほら〜。』なんて笑顔でカカシを引っ張る始末だ。 失敗した。酔わせたのが悪かったのか。 カカシは『は〜い。』と半泣きでイルカと一緒にテレビを観たのだった。――これが一回目の失敗。 しかし酔わせたのが悪かったかと反省し、素面のときに迫ってみてもイルカにはまったく通じなかった。「どうしたんですか?明日は早朝任務ですよね。早く寝ましょう。」だの、「明日は休みだから、今からナルトが泊まりに来ますよ〜。」だの・・・。こうして、するりさらりとかわされて早半年だ。 ワザとなのか!?と疑いもしたが、決してそうではない。ただ単に、イルカがそういう面で鈍くて天然なだけなのだ。だからカカシも強く出られなかった。 でも流石に・・・限界です、イルカ先生。 惚れた相手と同じベッドで眠って、何も感じずにいられるほどカカシは鈍くないし、年も食っていない。 しかも、本気の恋なのだ。 全部、イルカの全部を手に入れてしまいたいのだ。 だから、もう我慢できません。 カカシはポツリと呟いて、ぐっと拳を握り締めた。鈍くて天然なイルカに分からせるには唯一つ。ハッキリ、キッパリ言うしかない。カカシは決心した。この歳になって、こんな風に誘う事になるなんて思いもしなかったが仕方ない。カッコ悪いけど、情けないけど、別にいいやって思える。 イルカ先生ならこんなカッコ悪いオレでも、ちゃんと好きでいてくれる。 そう信じられるから。 だから、ねぇ。 お願いだから分かってよ。 この切ない男心を。 あなたに向かって突き進むこのココロを。
「セックスしましょう。」 「・・・へ?」 決断したカカシの行動は早かった。決心した次の日。夕飯を食べ終わり、わんにゃん奇想天外が始まる頃そう切り出した。きっちりと正座をし、正面に向き直り、イルカの目を見てハッキリとした口調で伝える。イルカはわんにゃん奇想天外のチャンネルに合わせようとテレビのリモコンを手に取ったところだった。 「オレ達、付き合い始めて半年ですよね?」 「は、はい。」 イルカは言われた内容を理解していないらしい。きょとんとした表情でカカシを見ている。そういえば、告白した時も理解するのが遅かったなとカカシは思った。 「オレはイルカ先生の全部が欲しいです。セックスしたいです。」 「せっくす・・・。」 イルカのこれは癖なのか。言われた内容を理解できない場合、鸚鵡返しをする。その時のイルカは子供のようにあどけなくて、とても可愛い。いつものカカシならば、可愛いな〜。なんて呑気な事を思っただろう。しかし今のカカシは欲情に目が眩んでいる。そんなイルカですら性欲の対象になっていた。 「えっ!えぇ!?」 一方イルカは、ようやく言われた言葉を理解したらしい。一気に真っ赤になり、何故だか分からないが辺りをキョロキョロ見回している。 あぁ、ヤバイ。可愛すぎて射精しそう。 逸る気持ちを抑えて、カカシは引き攣ってはいるが笑顔でイルカの手を引いた。イルカは眉を八の字にして困っている。当然と言えば当然だ。 「大丈夫、恐くないです。――好きだって気持ち伝えたいだけです。」 「・・・。」 これは本当。 カカシはゆっくりとイルカを寝室まで導く。イルカはそんなカカシの言葉に驚いた顔をした後、小さく。本当に小さくだけれど、頷いた。 イルカをベッドに座らせ、さていよいよこれからだとカカシは息巻いた。とにかく恐がらせないように、ゆっくりゆっくり――・・・。そんなことばかり考えていると、イルカの俯いていた顔が勢い良く上げられる。 「カカシ先生!!」 「はっはい!?」 あまりにも勢いが良かったものだから、カカシは思わず声を上擦らせてしまう。イルカは先ほどと同じように真っ赤な顔をしていたが、どこか踏ん切りをつけたような表情をしていた。 「オレ、頑張ります!!」 「えっ?うわ!」 予想外の出来事に、カカシはされるがままにベッドに押し倒される。ボスンッと景気の良い音が聞え、イルカの顔を見上げたカカシはパチクリと一度瞬きをする。 え?何でオレが押し倒されてんの? 目の前にあるイルカは真っ赤になっていて、でも不安げにカカシを見下ろしている。カカシの顔を挟んで付いている腕は震えていて、ギュッとシーツを握り締めていた。 「オレ、付き合ったりするの初めてで、よく分からなくて・・・そっそういうことするのは、最低一年はお付き合いしてからだって思ってたから・・・その。」 しどろもどろに言葉を紡ぐイルカ。照れて緊張していることがよく分かる。そんなイルカも可愛いなとカカシは素直に思ったが、今のイルカの発言に目を見開いた。 ちょっと待って。一年・・・?あと半年もこの状態をキープする予定だったのか!? 行動を起こしてよかった!カカシは心からそう思った。しかし恐ろしいイルカの発言は、まだ終わらない。 「キスも教えて貰ったくらいだから、分かってると思いますけど・・・オレ初めてです!上手く出来る自信なんてないですけど、頑張ります!」 イ・イルカ先生ったら、大胆ですね!嬉しいです!!と、カカシはヤル気満々のイルカに感動するくらい喜んだ。これは本当に最後まで出来そうだぞ―・と。 「イルカ先生、オレも頑張り――ぃい!?」 言い終わらないうちに、カカシはガバーッと自分の服のアンダーをめくり上げられた。これまた予想外の行動。そんなイルカは、「失礼します!」なんて気合の入った声を上げた。 も、もしかしてオレが下!?イルカ先生オレを犯るつもりなのか!? ようやくイルカの意図が掴めたカカシは、正直焦った。しかし直ぐに考えを改める。良く考えたら、イルカだって男だ。好きな相手に抱かれるより抱く方を考えるだろう。 それにイルカ先生なら、この後責任取らなきゃ〜とか大事にしなきゃ〜とか考えたんだろうな。 そう考えたら、清い半年間の交際の意味がよく分かる。イルカはカカシを大事にしてくれたのだろう。 ありがとね、イルカ先生。 未だにアンダーを捲っただけで、どうすればいいか悩んでいるイルカを見てカカシは微笑んだ。 本当に可愛い人だ。 でもね。 イルカ先生。オレも男だ〜からね。 「オレも先生のこと抱きたいんだーよね。」 「へ?何か言いましたか?」 悩みすぎてカカシの言葉を聞き逃したイルカは、きょとんとカカシを見下ろした。カカシはにっこり笑い、「何でもありません。」といけしゃあしゃあと答える。当然だ。 「センセ、まずはキスからしませんか?」 「え?あ、そ・そうですね!はい!!」 言われたイルカはわたわたと慌て、カカシの忍服から手をどかす。そして、むちゅっと唇を押し当てた。カカシはそんなイルカに苦笑し、するりと角度を変え口付けを深いものへと変えていく。 「ん・ぁ・・・っ。」 「イルカセンセ・・・もうちょっと口開けて・・・?」 下唇を嘗めてやると、イルカはぴくりと肩を震わせた。カカシは遠慮なんてせず、己の舌先を彼の口内へと侵入させた。イルカは一生懸命舌を絡めようと必死だが、まだまだ拙い。カカシは簡単にリードを取り戻す。 「はっ・んっ・・・。」 息継ぎが上手くいかないイルカは、カカシが身を起こし始めたのにも気が付かない。カカシは鍛え上げた腹筋を使って身を起こし、さり気無くイルカをベッドへと沈める。 形勢逆転っと! 口付けの快感に酔っているイルカ。カカシが先程とは逆に服を脱がしかかっている事にも気付かない。カカシは心の中で「よっし!」とガッツポーズをしていることにも、当然気付かない。 「ふっ・あ・・・カカシせんせ・・・。」 イルカ先生がキス弱い事知ってるもんね。このまま・・・このまま!! カカシはこのまま流しきってしまえと、慎重に服を脱がしていく。イルカには悪いと思うが、カカシだってもう止まらないところまで来てしまっている。 「カカシ先生・・・あ、あれ?」 しかし、流石のイルカも気付き始めたらしい。アンダーを脱がせることに成功し、カカシが胸の飾りに口付けた辺りで、イルカは疑問の声を上げた。 あー・・・流石に気付いたか〜。 「・・・イルカ先生。AV観た事ありますか?」 「はぁっ!?」 気付かれたと勘付いたカカシは、すぐさま対策を練ったらしい。突然、今の状況と関係ないんだかあるんだか分からない事を言われ、イルカは間抜けな声を出すしかなかった。 「ありますよね?」 「・・・ぅ・・・。」 にっこり笑って言ってやれば、イルカは真っ赤になったが否定はしなかった。まぁ、これは当然だろう。たとえ今まで誰とも恋人関係になっていなかったとしても、こういう経験はあるに決まっている。 「AV女優って、必ず男優に奉仕しますよね?」 「は・はぁ・・・。」 「それって、好きな相手に気持ちよくなって欲しいからなーんですよね〜。」 「そういうもんなんですか・・・。」 「だからオレがイルカ先生にしていることも、同じことなんです。」 「そうなんです、か・・・?」 「イルカ先生に気持ち良くなってほしいから、ご奉仕してます。」 だから女役のオレに押し倒されていても、変じゃないんですよー。 カカシの言いたいことが伝わったのかは分からないが、イルカは納得したようだった。「分かりました!お願いします!」なんて、また勘違いした台詞を言ってくれる。 カカシは確信していた。イルカが観てきたアダルトビデオなんて、ドラマのベッドシーンに毛が生えた程度の生温いものだろうと。きっと純愛系のストーリー性があるもので、過激なものはない。だから簡単に騙されてくれるだろうと、読んでいたのだ。そして実際そうだった。 ちなみにカカシが観てきた物は、ストーリーも何もない、複数プレイは当たり前、っていうかSM上等モノばかりだ。イルカなら鼻血を吹いて倒れるだろう。 とにかくイルカは騙されて、カカシにされるがままになっている。 「ぁっ・ぅう・・・!」 「ココ、嫌ですか?」 くちゅりと音を立てて胸の突起をしゃぶると、イルカは眉を寄せた。頬は見事に真っ赤に染まっており、苦痛とも快楽ともとれる表情をしている彼にカカシはごくりと喉を鳴らした。 「わ・わかりませ・・・っ。」 まぁ、最初はそうかもしれないな。 この感覚が快楽と分かるまで、もう少し掛かるのかもしれない。カカシは乳首全体を口に含み、口内でちろちろと嬲る。時折強めに噛んでやると、イルカはビクビクと大袈裟なくらいに身体を跳ねさせた。 「あっ・あっ・・・いやだ・・・っ!」 「おっと。」 思った以上の感覚にイルカは驚き、身体を捻ってしまった。カカシはひらりとそれをかわし、彼を抱きとめる。背中から抱き締めるようにベッドに横たわると、カカシはすかさずイルカの下肢に手を這わせた。イルカの身体が再び跳ね上がる。 「カ・カカシ先生・・・!」 「おっきくなってる・・・。」 くすりと耳元で笑むと、後からでもハッキリと彼が赤くなった事が分かった。カカシの掌は、イルカ自身をなぞる様にゆっくりと這い回る。 「胸、気持ち良かったですか・・・?」 「そんな・こと・・・っ!」 俯いたって隠れるわけじゃない、赤くなった耳朶に惹かれて、カカシはその肉を口に含む。自然と反らされた首筋に片方の手を這わせながら、もう一方の手で巧みにイルカ自身に刺激を与える。イルカの吐息が荒くなっていくのをリアルに感じる。カカシは、じんと痺れる己の欲望を味わった。 「嘘。気持ちよかったから、ココがこんな風になったんでしょ?」 「ち・違います・・・!オレは・・・!」 「本当に?おっきくなってないの?」 あくまで否定するイルカに、どんどん嗜虐心を擽られていく。カカシはそれに逆らわず、直に触れるためズボンへ手を滑らせた。 「やっ!」 「ホラ、嘘だ。ぬるぬるになってますよ・・・?」 初めて触れたイルカ自身の感触に、カカシは思わず舌嘗めずりをしてしまう。男の性器に触れて興奮するなんて信じられなかったが、やはりイルカは別物らしい。焦らすように手を上下すると、布越しなんてことを忘れるくらいに湿った音が下肢から聞えてきた。 すっげ・・・可愛い・・・。 カカシはうっとりと眼を細める。ちゃんとイルカが感じていてくれていることが嬉しくてたまらない。しかも彼は何とも自分好みの反応をしてくれる。イルカはふるふると小刻みに震えだし、唇を噛んでいる。快感をやり過ごそうとしているらしい。 「イルカ先生?もう窮屈だよね?」 「あ・っつ・・・!」 ずるりと下着ごとズボンを脱がしてしまう。目の前にぷるんと弾ける様に姿を現した自分自身をイルカは見てしまい、直ぐにぎゅっと目を閉じた。恥ずかしくて仕方ないのだろう。 「可愛い・・・。」 思ったことを素直に口にし、焦らさずに手を動かしてやる。溢れ出す蜜がカカシの手淫を手助けし、リズミカルに指が動いた。イルカは無意識に頭を小さく振っている。右手でイルカ自身を左手で胸の先端を同時に愛撫すると、彼はポロポロと涙を流し始めた。 ゾクゾクゾク――!! その涙を見て、カカシの背骨から脳髄へと一気に寒気にも似た快感が駆け巡った。カカシが小さく、イルカにも聞えない声で「もうダメ。」と呟き、イルカ自身の扱く手を速める。 「ひゃ・ぁあ!!」 「先生。気持ちイイ?」 「ィ・アッ・ハッ・ハァ・・・!!」 荒い吐息をイルカの耳に吹き込み、感情のまま愛撫をおくる。イルカは性急過ぎる快楽に息も追いつかないようで、短い呼吸をするのに精一杯になっていた。 「アッ・カカシ・・・せッんせぇ・・・!!」 「ねぇ、気持ちイイって言いなさいよ。」 「ひぃう・・・っ!」 胸に這わせていた手を止めて、両手でイルカの欲を扱きあげた。根元をぎゅっと握って達せないようにし、先端を親指で擦る。ぐちゃぐちゃと頭を捏ねると、イルカは刺激に目を見開いた。 暗にカカシが望む言葉を言わないと、イカセナイと伝えてやる。 「ヵ・カシせ・んせ・・ぇ・・・。」 呂律が回っていない。快楽と苦痛に挟まれている瞳は虚ろにカカシだけを映している。カカシは熱い吐息を吐いた。 たまらない。 「気持ちイイ・・・?」 「い・ですぅ・・・。気持ち・いぃ・・・で・・・。」 「嬉しい。」 「アッ・あぁ・・・っつ!!」 イルカの応えに満足したカカシは、根元の圧迫をゆるめイルカを追い上げた。解放されたイルカ自身は呆気なく熱を放った。ビクビクと震えながらカカシの手の内に熱い情欲を叩きつける。 「ッ・ハッ・ハッ・ハァ・・・!!」 「イルカ先生・・・。」 荒い呼吸を治め切れないイルカは、肩で息をする。カカシは手の内に放たれたイルカの名残を嘗め取り、震える彼を抱き締めた。 か・可愛かった〜!さ、次はオレも・・・!! ウキウキと心弾ませながら、カカシは上体を起こした。力の入っていないイルカを仰向けにさせ、改めて覆いかぶさろうと――・・・。 べちん!! 「はい・・・?」 下から伸びてきたイルカの手は、カカシに縋ってこなかった。間抜けな音を立てて、カカシの頬にヒットする。まさか平手打ちされると思っていなかったカカシは、これまた間抜けな声を出した。 呆然としながら平手打ちしてきたイルカを見下ろすと、彼ははらはらと涙を流してこちらを見上げてきていた。頬を真っ赤に染め上げて、歯を噛み締めている。時折聞えてくる、「ヒッ・ヒッ。」という声は、嗚咽を我慢しているのだろうか。 しまった・・・。 カカシの熱は一気に冷めた。 そうだった、この人何もかも初めてなんだ。 「――ごめんなさい。」 「カカシせんせ・・・っ。」 「イルカ先生があんまりにも可愛いから、調子乗りすぎました。」 もう一度抱き締めて背中をさすってやると、イルカはようやく安心したのか、腕を回してくれた。カカシはバツが悪い思いで一杯だ。 分かって欲しいなんて、勝手なことだ。 オレだって、自分のことばっかりだったな。 「ごめんね。」 「っつ・・・。」 ぶんぶんとイルカは頭を振って、ぎゅうぎゅうと抱き締めてきた。カカシはそんなイルカの幼い行動に苦笑し、そっと額に口付ける。 「あー・・・意地悪して、ごめーんね?」 ガシガシと頭を掻いて、カカシは先ほどの行動を詫びた。ちょっと本性が出てしまったらしい。まさか自分にこんな一面があったなんて、カカシ自身も知らなかったようだ。 イルカはカカシの言う『意地悪』の行動を思い出したらしく、口をへの字にしたが「いえ。」と小さく答えた。 「い、いいです・・・。意地悪なカカシさんも・・・カッコよかったです。」 「――〜〜〜!!」 どかーんっと冷めていた熱が湧き上がる。カカシはイルカのその一言で、自分の欲望が暴れ出したのを確認した。 なんて事言うんだ、アンタは! だ・だめだ!!我慢できない!! 狼よろしく、カカシは本能のままイルカに襲い掛かろうとした。確かにこの発言はイルカも軽率だっただろう。 しかし。 「何だかんだで、こんな時間になってしまいましたね。」 「え。」 「明日も早いですから、寝ましょうか。」 「イルカ先生・・・?」 「おやすみなさい、カカシ先生。」 にこーっなんて微笑んで、イルカはいそいそと布団に潜り込んでしまった。彼の中ではもう、解決してしまったらしい。カカシは狼の牙もそのままに置いてきぼりにされている。 が。 しょせん狼も飼われれば、ただのでかい犬。 「――・・・お・おやすみなさい・・・。」 鋭い牙を一生懸命隠しながら、飼い主の下で蹲るしか出来ないのだった。 結局今夜二人が進んだのは、お触りまで。カカシはお預けを喰ったまま。 でもまぁ、ちょっとはイルカも分かってくれたみたいだから。カカシは大人しく、いや、無理矢理。眠りについたのだった。 「あ、カカシ先生。」 「はい。」 「オレ、次はもっと頑張りますね!」 「・・・は・はい・・・?」 あれ、イルカ先生。 もしかして、まだオレのこと犯ろうと思ってるの?
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